■一言解説
第1図は1983年と1989年冬季(2月)の海面気圧分布である。寒色系の等圧線が気圧の低い部分を表しており、強弱はあるものの北太平洋のアリューシャン付近と北大西洋のアイスランド付近に低気圧が見られる。前者がアリューシャン低気圧、後者がアイスランド低気圧と呼ばれている。これらの低気圧の強弱は、周辺における冬季の天候に大きな影響を及ぼす。この両低気圧は大陸を挟んで離れたところにあり、一見何ら関係が無さそうである。しかし、過去数10年間冬季(特に2〜3月)の両低気圧の気圧変化を比較すると、明らかにアリューシャン低気圧が強(弱)い時は、アイスランド低気圧が弱(強)いという、負の相関がある。この気圧変動は、あたかもシーソーの様であることから、アリューシャン・アイスランド低気圧シーソー(AIS)と呼ばれる。第1図の左はアリューシャン低気圧の強い年、右は弱い年であり、それぞれのアイスランド低気圧を見ると、前者では弱く、後者では強いことが明確である。
■詳細

アリューシャン低気圧の強い冬は、日本東海上での低気圧の発達を伺わせ、冬型の気圧配置の強まりに繋がり、日本付近は寒気移流場で寒くなるという印象を受けるが、そうとは言えない。例えば、エルニーニョ発生時にもアリューシャン低気圧は発達するが、日本が寒冬になることは少ない。それはアリューシャン低気圧の位置や張り出しによって日本付近が暖気移流場になることもあるからである。アリューシャン低気圧が発達して日本が寒冬になるときには、アイスランド低気圧との関係(AIS)が示唆されることがある。第2図には、日本を含む極東一帯が寒くなる時の典型的なAISの構造を示している。気温偏差から、ヨーロッパや米国南東部で低温となり、反対に北米西海岸〜北部一帯と中東一帯で高温となっている。
第2図に基づいて、AISの形成過程を日本が寒冬(特に2月)になる場合を取り上げて説明する。1月に東部北太平洋上空の低気圧性偏差(A-)から定常ロスビー波が励起され、最初にカナダ西部上空に高気圧性(B+)、米国南東部に低気圧性偏差(C-)が形成される。2月になると、米国南東部の低気圧性偏差(C-)から北大西洋を横切る新たな定常ロスビー波が励起され、北大西洋上空に高気圧性偏差(D+)、ヨーロッパ上空に低気圧性偏差(E-)が形成される。こうしたロスビー波の伝播は図中の活動度フラックスから読み取れる。太平洋上のA-と大西洋のD+はそれぞれ、ストームトラックからのフィードバックを受けてさらに発達する。結果、この上空での循環偏差が地上での高低気圧の強弱に関係する。この例では、A-とD+が地表のアリューシャン低気圧の強まり及びアイスランド低気圧の弱まりとしてシーソー関係が見られる。両低気圧の強弱が逆になる時は、ロスビー波で見られる上空の高低気圧循環が逆になる。
参考文献
本田 明治・高谷 康太郎,2007:天気,
57,589-592.
宇宙航空研究開発機構 Webページ プレスリリース
北太平洋から北大西洋への「大気の架け橋」を発見
〜アリューシャン・アイスランド低気圧間のシーソー現象の解明〜