■一言解説

1980年代の終わりごろから、気候変動の中には、約10年〜数10年の時間スケールをもつ変動があることがわかってきた。そのなかで、1970年代半ばの急激な気候変動をレジームシフト及び気候ジャンプと呼んでいる。気候ジャンプの1つの準定常状態からもう1つの準定常状態への急変するイベントを指している。このような気候ジャンプに関しては、1950年ごろや1980年代後半にも起きたという指摘もある。また、その変動は、異常気象の源と言えるENSOよりも長い時間スケールをもち、かつその大きさはENSOに匹敵すると考えられている。
■詳解
具体的に、約10年〜数10年スケールの気候変動が具体的にどのように捉えられているのかを以下に、事例を挙げて説明しよう。

図1は北太平洋指数と呼ばれるPNAテレコネクションパターンの活動度を示す指数の時系列を示している。年毎に大きく変動しているが、5年平均値からは、1940年代半ばまでの低指数、その後1970年代までの高指数、その後1980年代後半までの低指数、そしてその後の高指数という、約10年〜数10年の時間スケールの変動がみられる。
図2は、北太平洋の冬季海面水温偏差場に対するEOF解析の結果を示している。北緯40度、日付変更線を中心とする楕円状の領域で正、その周辺部で負の分布を示している。時係数は1970年代半ばに正から負に、急激に遷移しているのが特徴的である。ここで、時係数が正(負)とは図2の正(負)の値の領域で海面水温が平年より高い(低い)ことを示す。図1と図2を比較すると、そこに現れた両者の変動は極めてよい対応をしているのがわかる。というのは、1970年代半ばからの低指数(図1)はアリューシャン低気圧の発達、偏西風の強化を意味し、それに伴う同海域からの海面熱フラックスの増加、鉛直混合の活発化と南向きエクマン層の強化による冷たい北の水の南下が絡み合って、海面水温の低下をもたらしていると考えらている。

このような大気と海洋とが連動した変動は、日本の気候にも現れている。図3は、岩手県宮古市における夏季の気温の偏差時系列を示す。夏季の気温変動が、1950年代〜1970年代半ばまでは比較的安定であるのに、それ以降では年々変動が大きくなっており、年々変動の大きい期間、小さい期間が数10年スケールで変わっていることがわかる。よく似た気温変動は北アメリカ大陸にもみられるという指摘があるが、その原因を含めメカニズムについてはよくわかっていない。
この3つの図から、1970年代後半に大きな気候の変動があったことがわかる。これが気候ジャンプまたはレジームシフトとして注目されたわけである。
参考文献
新田 尚, 伊藤 朋之, 木村 龍治, 住 明正, 安成 哲三, 2002 : キーワード 気象の事典。 朝倉書店, 520頁。