■一言解説
多くの総観規模の低気圧の発達過程では、下層の傾圧帯に背の低い低気圧の卵があり、その上空に西から上層のトラフが接近して、下層の低気圧と一体となることで背の高い低気圧が形成されるという現象が見られる。この現象のことを、上層と下層の擾乱の「カップリング」という。
■詳解
ここでは、2004年11月14日〜16日にかけて見られた日本付近でのカップリングの事例を示す。図1は、14、15、16日のそれぞれ09時における地上天気図(上段、(a)、(b)、(c))と300hPa面ジオポテンシャル高度と鉛直p速度の分布(下段、(d)、(e)、(f))を示している。
14日09時(a)の地上天気図では、沿海州北部に低気圧Aがあり、華南から東シナ海そして九州南部にかけて停滞前線が伸びている。停滞前線は九州の西で北に湾曲している。翌日(b)には、低気圧Aは南東進して北海道の北西海上に移動している。九州に伸びていた前線上には低気圧Bが形成され紀伊半島付近まで東進している。この後、低気圧Aと低気圧Bは共に北東進して、互いに接近して16日09時にはオホーツク海で1つにまとまった。この過程で、低気圧の中心気圧は1002hPaから964hPaまで下がり、24時間で38hPaの急発達を示す爆弾低気圧となった。
次に、上層の大気の流れに着目する。14日(d)には低気圧Aの後面にあたる北西側に北東から南西に伸びるトラフが見られるが、低気圧A付近の上昇気流はそれほど強くない。また、九州に伸びる前線の湾曲部分付近には目立ったトラフは見られない。翌日(e)には、トラフは深まりながら順調に東進し、また東シナ海付近にも弱いトラフが見られる。トラフの前面(東側)には強い上昇流域が見られ、低気圧A及びBともにこの上昇流域に位置している。また、トラフの後面の朝鮮半島北部には下降流域が見られ、低気圧A付近で暖気の上昇、寒気の下降という有効位置エネルギーから運動エネルギーへの変換が起きていることが伺える。16日(f)にかけても、トラフは順調に東進して、低気圧とトラフの位置が同位置になっている。低気圧の中心付近に強い上昇気流は見受けられない。
この事例において、低気圧Bは低気圧Aの後面のトラフとは関係なく発生しており、東進を続ける過程で、上層のトラフと一体化して急激に発達していった。まさにカップリングを通して低気圧の発達が促進されたといえる。また、図に示さないが、上層のトラフ付近では圏界面が垂れ下がっており、正の渦位のアノマリーがそこに存在していたことが示唆される。正の渦位のアノマリーの東進にともなって、その前面で誘起された上昇気流が低気圧を発達させたともいえる(「渦位のアノマリー参照」)。いずれにしても、下層の擾乱は、上層の擾乱によって大きく影響されることがわかる。
参考文献
小倉 義光, 2000 : 総観気象学入門。 東京大学出版会, 289頁。