寒冷渦(寒冷低気圧・切離低気圧)
一言解説
寒冷渦通過時の地上、高層天気図の模式図 天気予報で、しばしば耳にする「上空に寒気を伴った低気圧」のことを、気象学では「寒冷渦」、「寒冷低気圧」及び「切離低気圧」と呼ぶ。寒冷渦とは、冷たい空気からできており、同じ高度での気温分布を見ると、低気圧内の方が周囲よりも気温が低くなっている。上層ほど低気圧として明瞭に解析され、ジェット気流とは隔離されているため動きが遅いのが特徴である。

詳解
寒冷渦は上空の寒気核と低気圧の位置が一致した順圧的構造を持っている。空気は冷たいほど重く、気圧はその空気の積み重なった重さの結果であるので、寒冷渦は上空に行くほど周囲に比べて気圧が低くなっている。そのため、図1にも示したように、寒冷渦は地上では低気圧が明瞭でなくても500hPa面などの高層では顕著な低気圧が解析されることがある。
図2には、寒冷渦の中心を通る鉛直断面での温度、温位の分布を示している。圏界面下降部の上空の大気は気温が高く密度が低いため、圏界面付近では、上に積み重ねられる大気の重さは軽く、気圧は周囲よりも低くなる。一方、圏界面より下では、圏界面下降部の大気温度が低いため、大気が重く地上までに積み重ねられる大気の重さは重くなり、地上付近では気圧が高く低気圧は明瞭でなくなる。
寒冷渦の鉛直構造 寒冷渦では、上空に寒気が入り込むため、大気が不安定になる。この際に、下層が日射によって強く加熱されたり、下層に湿潤な大気の流入があると一層大気は不安定化する。大気が不安定化すると、対流活動が活発になり、積乱雲などの対流雲が発達する。よって、寒冷渦の周辺では、積乱雲等による気象現象である、降雹、短時間強雨、落雷、突風などの激しい現象が起こる可能性が高くなる。一般に、低気圧に向かって南からの温暖湿潤な空気の流れ込みやすい寒冷渦の南東側で、大気の不安定が強く対流活動が活発になり、スコールラインを形成することもしばしばある。また、図1の高層天気図からわかるように、寒冷渦の中心はジェット気流の弱い領域に位置している。そのため、寒冷渦は動きが遅く日本を通過するのに2〜3日ほどかかる。

参考文献
小倉 義光, 1999 : 一般気象学[第2版]。 東京大学出版会, 308頁。