乾燥断熱減率
一言解説
飽和していない空気塊がそのまま飽和することなく、上昇及び下降する時、周辺の大気と熱のやりとりが無ければ(断熱変化)、その空気塊の温度変化は1kmあたり9.8℃になる。この温度変化の割合9.8[K/km]のことを乾燥断熱減率という。

詳解
乾燥断熱減率の導出 乾燥断熱減率は、式(1)で表される熱力学の第一法則と、式(2)で表される静力学平衡の式から導くことができる。
熱力学の第一法則の式(1)
静力学平衡式(2)
熱力学の第一法則の式(1)の右辺第2項に静水圧平衡の式(2)を代入すると、式(3)が得られる。
静力学平衡式代入後の熱力学の式(3)
空気塊に熱の出入りが無いとき(断熱変化の時)には、式(3)の凾p=0とすればとなるため、式(3)は式(4)のようになる。
乾燥断熱減率の式(4)
式(4)の意味は、空気塊が断熱的に上昇すれば周囲の気圧が低くなるため、空気塊は膨張し、それに要する仕事によって空気塊の温度は下がる(内部エネルギーを消費することで空気塊の体積が膨張する)。その温度の下がる割合がΓdで与えられるということである。このΓdが乾燥断熱減率である。地球大気の場合、Γd=9.8K/kmとなる。すなわち、空気塊が断熱的に1km上昇(下降)するごとに温度は約10K下(上)がる。

乾燥静的エネルギー
熱力学の式及び静力学平衡の式からは、乾燥静的エネルギーを導くことができる。 式(3)において、儔=0とすれば、式(5)のように表現することができる。
乾燥静的エネルギー保存の式(5)
すなわち断熱変化をしている空気塊では、乾燥静的エネルギーhdと呼ばれる量(式(6))が保存されることを示す。
乾燥静的エネルギー(6)
この量はエンタルピー(CpT)と位置エネルギー(gz)の和である。

参考文献
小倉 義光, 1999 : 気象力学通論。 東京大学出版会, 249頁。
二宮 洸三, 1998 : 天気予報の物理学。 オーム社, 202頁。