■一言解説
エマグラムとは、図1に示したように、縦軸に気圧、横軸に気温をとり、各気圧面での大気温度と露点温度を示したグラフのことである。このグラフから、大気の湿潤状況や安定度を知ることができる。その代表がショワルター安定指数(SSI)である。
■詳解
図1には、エマグラムの例を2つ挙げた。(a)のグラフから、500hPaまで大気温度と露点温度の差が小さく、大気が500hPa面まで湿潤な状態にあることが読み取れる。(b)では、850-700hPaの層に、上層ほど気温が高い逆転層があり、この間の大気が非常に安定であることが読み取れる。
ショワルター安定指数(SSI)

ショワルター安定指数(SSI)とは、850hPa面にある空気塊を500hPa面まで断熱的に持ち上げた時に、500hPa面で観測されている気温T
2から断熱的に持ち上げられた空気塊の温度T
1を引いた差(T
2−T
1)を1℃単位で表したものである。この値が小さいほど大気が不安定であることを示す。SSIが正の数ならば大気は鉛直安定、負の数ならば鉛直不安定、0ならば中立というのが一応の目安である。夏季において、SSIが-3以下であれば雷雨の可能性がある。
では、エマグラムからどのようにしてSSIを求めることができるのか。次に図2に基づいてその手順を紹介する。
- 850hPa面の大気を乾燥断熱線に沿って上昇させる。(a〜b)
- 850hPa面の露点温度に対応する等混合比線と1の軌跡の交点は、凝結高度である。(b)
- 凝結高度に達したら、湿潤断熱線に沿って500hPa面まで上昇させる(b〜c)。
- 500hPa面で観測された気温(Te)と1〜3の手順で求められる500hPaでの気温(Tc)の差(Te-Tc)をとった結果がSSIである。
SSIには、ここで述べた850hPa面と500hPa面間で表すものと、500hPa面の代わりに700hPa面を採用するものがある。後者は、下層大気の安定度を表すもので、冬季の日本海側の大気状態を知るのに便利である。冬季は、中層に逆転層が存在しやすく、500hPa-850hPaのSSIでは不安定でない場合が多い割には雷が発生する。それには700hPa-850hPaの下層の大気安定度が大きく寄与していることが言える。冬季の雷雲は雲頂が低く、せいぜい数千m程度である(夏季は10000mを超える)。
エマグラムと熱力学のいろいろな量との関係

エマグラムには、大気温度と露点温度の他に、乾燥断熱線、湿潤断熱線及び等飽和混合比線が描かれている。乾燥断熱線には温位(θ)、湿潤断熱線には湿球温位(θ
w)の値が10Kごとに、等飽和混合比線にはgkg
-1単位で混合比の値が書き込まれている。ここでは、エマグラム上での観測した空気の温度とその空気の温位、相当温位等の関係を述べる。
図3を見てほしい。ある地点ある高度での空気塊の気圧(p)と温度(T)が観測されたとする。この空気塊を持ち上げたり、逆に下げたりしたときの温度は乾燥断熱線に従って変化する。このとき、1000hPa面まで移動させたときの空気塊の温度Tが温位(θ)となる。観測で空気塊の混合比が分かっているときには、乾燥断熱線を上にたどって観測された混合比と等しい値の等飽和混合比線に達した高度が、空気塊が飽和する高度(持ち上げ凝結高度=雲底の高さ)となる。さらに空気塊を上に持ち上げると、空気塊は常に飽和状態にあるため、温度は先の等飽和混合比線と乾燥断熱線の交点を通る湿潤断熱線に沿って変化する。逆に湿潤断熱線を下にたどって1000hPa面まで移動させたときの温度は湿球温位(θ
w)を与える。余談だが、上空ほど空気中に含みうる水蒸気量は減るため、湿潤断熱線の傾きは乾燥断熱線のそれに近くなる。湿潤断熱線をどんどん上にたどって、空気中の水蒸気量が限りなくゼロに近いところまで(対流圏界面高度くらいまで)空気塊を持っていき、その点を通る乾燥断熱線に沿って1000hPa面まで移動させたときの温度は相当温位(θ
e)を与える。
参考文献
小倉 義光, 1999 : 一般気象学[第2版]。 東京大学出版会, 308頁。