■一言解説

発達した熱帯性低気圧や台風の場合のように、空気塊が直線的でなく曲率をもって運動している時には、求心加速度をもっているため地衡風を考える際、みかけの遠心力を考慮する必要がある。気圧傾度力、コリオリ力そして遠心力が釣り合って吹く風を傾度風という。
■詳解
図1左のように北半球での仮想的な低気圧を想定した場合、空気塊は円を描いて反時計回りに運動していることになる。この際、気圧傾度力は低気圧の中心方向、コリオリ力と遠心力は反対方向に働いており、この3力が釣り合った状態で空気塊は動くことになる。高気圧を想定した場合は、コリオリ力が高気圧の中心方向に、気圧傾度力と遠心力が反対方向に働くことになる。まとめると、摩擦力、コリオリ力、気圧傾度力という、この3力の間には式(1)が成り立つ。
 | (1) |
ここで、低気圧の場合はV>0、Pn>0、高気圧の場合はV<0、Pn<0と考えればよい。低気圧性の風では、傾度風は地衡風よりも弱く、高気圧性の風の場合は逆に強くなる。式(1)の解を求めると式(2)が得られる。
 | (2) |
Vは実数でなければならないから、高気圧性の風の場合には、以下の(3)のような条件が成り立っていなければ、傾度風のような解は存在しないことになる。
 | (3) |
したがって、rが小さいところ、すなわち高気圧の中心付近では気圧傾度も小さくなくてはならない。低気圧の場合にはそのような制限がないために、強い風を伴う場合がある。図2は、rをある値に固定した場合の傾度風速と気圧傾度力の関係である。以上に述べたことがこのグラフから読み取れる。
参考文献
小倉 義光, 1999 : 一般気象学[第2版]。 東京大学出版会, 308頁。