季節内振動・季節内変動
一言解説
季節内振動(Intraseaonal Oscillation)は、季節内変動とも呼ばれる。一般に地上気圧や循環、降水・対流活動などに見られる変動の周期が年周期より短く、10日より長い変動で30〜60日程度の変動を指す場合が多い。明確な定義はない。低緯度地域では40〜50日の周期で対流活動の活発地域が東進するマッデン・ジュリアン振動(MJO)が有名である。中緯度や高緯度でも14日周期前後の変動が見られることが知られている。マッデン・ジュリアン振動の詳細は、該当ページを参照されたい。

詳解
98年5−8月の北緯30°でのTbbの経度時間断面 マッデン・ジュリアン振動を代表とする熱帯の季節内変動は対流活動と深く関わりを持っているため、南アジア、東南アジアそしてオーストラリア北部でのモンスーンの開始や活発期及び不活発期などに大きく影響する。
季節内振動は、熱帯に限らず中緯度や高緯度の大気にも見られることが知られている。チベット高原の夏季モンスーン期の対流活動には、準2週間(14日)周期が見られる。図1は98年の5-8月における長江流域の北緯30度での雲活動を表すTbbの経度時間断面図である。ハッチがかかっている領域ではTbbが低く、対流活動が活発であることを示している。まず、チベット高原の東では、青の矢印で示したような、対流活動域の西進が約30日周期で見られた。さらに、チベット高原上(80-100E)の対流活動によくよく着目すると、対流活発期、不活発期が約2週間周期の変動を持っていることが見て取れる。6月下旬〜7月上旬、7月20日前後、7月末〜8月始め、8月中旬に比較的活発で、その間の期間は相対的に不安定である。これらも季節内振動である。他にも、インド洋で発生するモンスーン擾乱は、約2週間周期で発生・発達することが分かっている。なぜ、2週間及び30〜60日周期で気象現象が変動しているのかについてはよくわかっていない。

熱帯の季節内変動と中緯度大気への影響
赤道付近の対流活動と中高緯度の大気への影響 熱帯の大気循環の変動は中緯度の大気循環に影響を与えることが示唆されている。図2に示すように、熱帯域で起きる大規模な対流活動の活発化によって、下層で収束上昇した空気は上層での空気の発散強化をもたらす。この発散風は、赤道を挟んで南北両半球に対の高気圧をつくり、さらに高気圧−低気圧の波列となって中緯度の大気循環に変化をもたらす。冬季では、図2で薄いハッチで示した温帯低気圧の通過しやすい経路であるストームトラックが、この波列に伴う低気圧に影響されて、平年より低緯度側に移ることになる。このため冬季にフィリピン付近での対流活動が活発になると、ジェット気流に沿って存在するストームトラックが南下し、日本付近では極側にある寒気が流れ込みやすくなり、寒冬となる。
この波列は、東風の中では伝播できないので、亜熱帯中上層のの東風が季節的に強くなる夏季より冬季に中緯度への影響が大きくなる。夏季においても、西太平洋熱帯域の熱帯収束帯はフィリピン付近まで北上するため、西太平洋における対流活動は東アジア、北太平洋、そして北アメリカに影響を及ぼす。夏季のフィリピン付近の対流活動が活発(不活発)になると、日本付近は高(低)気圧が強まり、暑夏(冷夏)となりやすい。また、台風の発生数にも大きな影響を与える。

参考文献
新田 尚, 伊藤 朋之, 木村 龍治, 住 明正, 安成 哲三, 2002 : キーワード 気象の事典。 朝倉書店, 520頁。