ジェット気流
東西風の南北鉛直分布 一言解説
図1は、北半球の冬(12〜2月)における、東西風の緯度−鉛直断面図を示している。暖色系が西風、寒色系は東風であり、南北両半球とも中緯度上空は全般的に西風(偏西風と呼ぶ)になっている。そして、中緯度の対流圏上層で偏西風が強い部分をジェット気流と呼ぶ。ジェット気流の強さは南北両半球とも冬季に最大となる。また、ジェット気流の南側に沿って巻雲が形成されることがあり、ジェット巻雲と呼ばれる。詳細は「ジェット巻雲」のページを参照されたい。

詳解
代表的なジェット気流には以下のようなものがある。

(1) 亜熱帯ジェット気流
南北両半球の30度付近の緯度帯に沿って吹く強い西風で、200hPa辺りの高度に最大の風速が観測される(図1参照)。亜熱帯ジェット気流の軸は中緯度圏界面と熱帯圏界面の切れ目に位置し、前者よりも上、後者よりも下の高度にある。より高緯度にある寒帯前線ジェット気流と異なり、時間的・空間的な変動が小さく安定なため、月平均の天気図や図1のような東西平均子午断面図でも明確に認められる。ジェット気流の強さは、南北両半球共に冬季に最大になり、北半球では寒帯前線ジェット気流と合流する日本付近で70m/s、時には100m/sを超えるときもある。南半球では、オーストラリア付近で最大になり50m/sを超す。北半球の亜熱帯ジェット気流は、年間を通じて北緯30度付近を吹いているが、南半球では冬季は南緯30度付近、夏季は南緯45度付近に移動する。
亜熱帯ジェット気流下の対流圏中・下層は、寒帯前線ジェット気流ほど南北の温度傾度が大きくないため、温度風の関係から強風域は対流圏上層部に限られる。亜熱帯ジェット気流は、ハドレー循環の高緯度側の限界に位置しており、ジェット気流の西風を維持しているメカニズムとして、ジェット気流の高緯度側の傾圧不安定波動による渦度の水平混合だけでなく、ハドレー循環による角運動量収束も働いていると考えられている。
図2の赤い矢印が亜熱帯ジェット気流に相当する。

1997年2月1日の300hPaにおける風速分布 (2)寒帯前線ジェット気流
中緯度から高緯度にかけて、特に冬季に、偏西風帯のなかで温帯低気圧の活動に伴って、亜熱帯ジェット気流の高緯度側、寒帯圏界面と中緯度圏界面の境目に強風域が出現することがある。それが、寒帯前線ジェット気流である。亜熱帯ジェット気流と共存してダブルジェットの状態となるところもある。日本付近上空や北米大陸上空では亜熱帯ジェット気流と寒帯前線ジェット気流が合流して、ただ1本のジェット気流となっていることがある。亜熱帯ジェット気流に対して、寒帯前線ジェット気流は南北に大きく蛇行しており、場所によって2本に分裂したり消滅したりするなど、時間的にも空間的にも変動が激しい。よって、地形や海陸分布による影響の小さい南半球の冬季を除いて、図1のような平均図では認めらない。ジェット気流は、寒帯前線の強い温度傾度による温度風の関係で成り立っていると考えられており、前線の温度傾度がより強くなる冬季に強まる。特に定常的に気圧の谷が存在し、北極の寒気と海洋の暖気が接している冬季の日本付近や北米東岸では著しく強まる。図2の水色のラインに相当する。

また、ジェット気流の南側に沿って巻雲が形成されることがある。 ジェット気流に直角な波状の巻雲列(トランスバースライン)や細長い筋状の巻雲(シーラスストリーク)が発生することがある。これらをジェット巻雲という。晴天乱気流(CAT)はトランスバースラインに伴うものの方が強いことが多い。

参考文献
小倉 義光, 1999 : 一般気象学[第2版]。 東京大学出版会, 308頁。