ケルビン・ヘルムホルツ波
一言解説
雲が可視化したケルビン・ヘルムホルツ波 密度の異なる2つの流体層が接する水平境界面での速度差によって上安定が起きるときに生じる波。上方に軽いものがある密度成層した流体の中に、高さとともに水平速度が変化する流れがある場合、成層が安定であるにも関わらず、基本場の運動エネルギーをエネルギー源として、擾乱が成長して流体層が上安定になることがある。その上安定を解消するために発生する波がケルビン・ヘルムホルツ波である。

詳解
大気の成層の安定度と風速の鉛直シアの比であるリチャードソン数が1/4以下の場合、流体層が上安定になりうる。リチャードソン数Ri=N2/S2、Nはブラントバイサラの振動数、Sは風の鉛直シアであり、大まかにいって、流れを安定化しようとする密度成層がもつ位置エネルギーと流れを上安定化しようとする鉛直シア流がもつ、利用可能な運動エネルギーの比になっている。この問題の特殊な場合として、一定の速度と一定の密度をもつ2つの流体層が水平な境界面で接している場合が考えられる。この場合の上安定をケルビン・ヘルムホルツ上安定といい、そこで発生する波をケルビン・ヘルムホルツ波という。
重力加速度をg、上層の密度と水平速度をρ1とU1、下層の密度と水平速度をρ2とU2、水平速度方向の波の波数をkとする。上層の方が軽い場合(ρ1<ρ2)、
k > {g(ρ2―ρ1)(ρ2+ρ1)} /{ρ1ρ2(U2*U1)2

となる波は上安定となり成長する。上層の方が重い場合は(ρ1>ρ2)、すべての波数に対して上安定が生じる。
上安定より、ケルビン・ヘルムホルツ波の振幅が時間とともに増大すると、波が巻きこみ、渦巻きの列となり、やがて渦は崩れて乱流状態となる。
現実の大気においては、境界面を挟んで密度が上連続的に変化することはないが、対流圏の上層や中層では、前線面を挟んで上側の暖気と下側の寒気の間でかなりの速度差がある。この場合、波状雲を伴うケルビン・ヘルムホルツ波が出現することがある。 晴天乱(気)流もケルビン・ヘルムホルツ波の結果であると考えられる。
ケルビン・ヘルムホルツ波による温位の分布