カルマン渦
一言解説
カルマン渦の模式図 棒やバットを振ると、「ブーン」という音がしたり、風の強い日に電線が鳴ることはよくある。これらは、空気を切るときのバットの周りや、空気が流れている(風が吹いている)ときに電線の周りで出来る渦が関係している。そうした渦の中で、カルマン渦とは、図1で示したように一様な流れの中に物体 (例えば円柱) をおいたときに、下流側に交互にで きる渦のことである。

詳解
カルマン渦を実験的に表現するには、古くは10世紀初頭の古今時代にその記述があるという「墨流し」の技法を使うとできる。バットに牛乳を薄めて入れ、墨汁を含ませた筆をその中に入れてまっすぐに動かすと、後ろに渦模様が出来る。これがカルマン渦列である。筆の動かす速度を変えると渦模様のできかたが違ってくる。また、ラーメンを食べた後、スープに直角に割りばしを一本立て、そのまま手前に引けばきれいな渦列をつくることもできる。
レイノルズ数と物体周辺の流れ カルマン渦が発生すると、物体の左右で渦が交互に発生するために物体が振動する。これがときに惨事をもたらすこともある。ワシントン州タコマ市では1940年にナローズ橋というつり橋が崩壊した。この1940年の崩壊は、風の渦との共振によるものだと考えられている。この場合は、橋が円柱の役割をして、カルマン渦ができたと考えられている。カルマン渦による振動は円柱形の物体だけでなく、自動車、船、飛行機など高速で動く物に伴って発生、横揺れの振動を引き起こし、騒音や金属疲労の原因となっている。円柱の周りにらせん状の物を取り付ければ、渦のでき方が不規則になり、振動はなくなる。
カルマン渦の形成には条件がある。円柱の大きさ、流体の密度、粘性そして流れの速さによって、円柱の下流側にできる流れには違いが現れる。その流れの違いは、円柱の直径d,、流体の粘性ν、流体の流れの速さをUとおいて表されるレイノルズ数Re=Ud/νの値によって分けることができる。例えば、円柱の大きさ、流体の粘性係数νを一定にして、流れの速さだけを大きくした場合、円柱の下流の流れは図2のように変化していく。流れが遅いうちは、双子渦が形成され、レイノルズ数50〜60を境にしてカルマン渦へと変化、そしてさらに流れが速くなると乱流へと変化していく。また、カルマン渦が発生する周期は、流体の流れが速いほど短くなり、渦と渦の間隔は速さによらず、円柱の直径の約5〜6倍になる。
カルマン渦は、もっとスケールの大きいところでも発生していて見ることができる。 図3は北西季節風が吹いたときの東シナ海周辺での赤外画像である。よく見ると、済州島の風下側に小さなコンマ状の雲が交互に並んでいるのがわかる。これは正にカルマン渦列である。北西の季節風が、清州島にぶつかることによってできたもので、清州島が円柱の役割を果たしているといえる。冬にはしばしば、この光景が見られる。 済州島南東海上のカルマン渦の事例(2007年2月15日12時可視画像)