■一言解説
準地衡風方程式系においては、水平風は地衡風であり、温位、水蒸気及び運動量もすべて地衡風で移流される。しかし、鉛直流ω(鉛直p速度)は存在している。準地衡風方程式系において、鉛直流ωとその流れを励起する絶対渦度移流と暖気移流の関係を表した式のことをω方程式という。具体的には次式(1)で表される。
 |
(1) |
式(1)について説明する。F
1が渦度移流が鉛直流変化に及ぼす影響を表している。u
g、v
gはそれぞれ地衡風の東西成分、南北成分、ζ
gは地衡風から求められる渦度、fはコリオリパラメータ(惑星渦度)で緯度yによって変化する、そしてf
0は一定としたコリオリパラメータである。ここでf=f
0+βyの関係にある。F
2が暖気移流が鉛直流変化に及ぼす影響を表している。φ’はジオポテンシャルの基本場φ
0(p)からの偏差を表している。そして、ジオポテンシャルと比容は−∂φ’/∂p=α'=1/ρの関係式で表せることから、温度に関係していることが分かる。
式(1)において、ある時刻のφ’が分かっていれば、同時刻の地衡風、渦度の分布が分かり、結果F
1、F
2が計算できて鉛直流ωの分布が分かることになる。
■詳解
ω方程式の導出過程
最初に、準地衡風方程式系からω方程式を導く過程を説明しよう。方程式系の詳細については該当ページを参照していただくとして、ここでは、いきなり準地衡風方程式系の渦度方程式(2)と熱力学の式(3)を出発点とする。
 |
(2) |
 |
(3) |
式(3)において断熱過程を仮定する。次に式(2)をpで微分、式(3)に式(4)で表される2次元ラプラシアンという偏微分を作用させ、引き算をすると時間微分の含む項が消えて式(1)のω方程式が導かれる。
 |
(4) |
渦度移流か、温度移流か
ω方程式によれば、鉛直流の分布はF
1とF
2の和によって決まる。ここで、F
1とF
2のどちらかが他方に比べて圧倒的に大きいと言えれば、ωが渦度移流によって励起されたものか、温度移流によって励起されたものなのかはっきり区別できるが、実際には無理である。というのは、F
1とF
2で異なる符合をもつ場合があり、それはF
1とF
2には共通する項が含まれているからである。一連の式(5)は、F
1とF
2を成分に分解した結果である。
 |
(5) |
これによると、F
1とF
2には共通してAとBの項が含まれている。CはAとBに比べて小さいので無視し、Λ=0と仮定すると、F
1+F
2=2Aとなる。これより、渦度移流と温度移流がωに与える影響を別々に評価することはできないのである。
新しいω方程式の形、Qベクトルの導入
ω方程式は式(1)とは別の形で表現されることがある。ここでは、準地衡風方程式系と温度風の関係式より別表現のω方程式を導く過程を説明する。
まず、準地衡風方程式系においてβ効果を無視すると、運動方程式は次式(6)で表される。
 |
(6) |
温度風の関係式は式(7)で、断熱変化における温度Tを用いた熱力学の式は(8)で表現される。
 |
(7) |
 |
(8) |
温度風の式(7)の第1式の右辺にd
g/dtを作用させる。pはd
g/dtで微分されないことを考慮して、
 |
(9) |
式(9)のd
gT/dtに式(8)を代入すると、式(10)が得られる。
 |
(10) |
同じようにして、温度風の関係式の左辺を微分すると、
 |
(11) |
式(11)において、式(6)と温度風の式を用いると、式(12)が導ける。
 |
(12) |
そして、式(10)と(12)の右辺は等しくなくてはならないという条件から、式(13)が得られる。
 |
(13) |
温度風の関係式(7)の第2式についても、同様にd
g/dtを作用させて、同じ手順で式の変形、整理を行っていくと、次式(14)が得られる。
 |
(14) |
さらに、式(13)をyで微分し、式(14)をxで微分して、準地衡風における連続の式(非地衡風成分の発散=鉛直p速度の高度変化)を適用すると、式(15)となる。
 |
(15) |
式(15)が新しい形のω方程式である。この式によれば、Qベクトルの収束(発散)域には上昇(下降)流があることになる。
参考文献
小倉 義光, 2000 : 総観気象学入門。 東京大学出版会, 289頁。