オゾン層・オゾンホール
オゾン分圧の高度分布 一言解説
図1につくば(茨城県)と南極昭和基地における2005年12月のオゾン分圧の高度分布を示している。この分布より両地点に共通して成層圏内の高度約20〜25kmを中心にオゾン(O3)分圧が極大となっている気層がある。この層のことをオゾン層という。このオゾン層が太陽から放射される有害な紫外線を吸収してくれるため、生物が地球上に生存できる。
80年代半ばに、南極上空でオゾンの量が小さい領域が現れ、年々拡大を続けていることが南極観測や人工衛星によって認識されるようになった。このオゾンの少ない領域をオゾンホールという。現在も拡大を続けており、その大きさは南極大陸より大きくなっている。図2にはオゾンホールが形成される前の1979年12月と最近2004年12月における南半球でのオゾン全量の分布を示している。2004年の南極上空のオゾンの量が1979年のそれに比べて著しく減少している様子が分かる。

詳解
1979と2004年の南半球のオゾン量分布 オゾン層
オゾン層にオゾンが多く含まれているとは言っても、高度約20kmで気体分子100万個のうち1個がオゾンであるという程度である。オゾンは、酸素分子が紫外線(0.24μm以下)を吸収して2つの酸素原子に分裂し(これを光解離という)、その酸素原子が酸素分子と結合して生成される。この過程には第3の分子(なんでも良いが、主に窒素、酸素)が介在しなければならない。オゾンもまた、紫外線(0.32μm以下)吸収や触媒サイクルで酸素分子と酸素原子に分離される。 図3には、大気柱内のオゾン全量の緯度−時間断面を示してある。オゾンが太陽光に含まれる紫外線によって生成されることから考えると、日射量の多い赤道域でオゾンの量が最大になりそうなものだが、実際の極大域は北極や南極に近い高緯度側で、しかも日射量の多い夏ではなく春である。これは、成層圏下部に低緯度から高緯度に向かう流れがあるためであり、この流れに乗って赤道域で形成されたオゾンが冬半球の高緯度に運ばれ、オゾンが蓄積され春に最大になるためである。

オゾンホール
オゾン量の緯度季節分布 このオゾン層に関して、90年代から問題視されているのが、オゾン層の破壊であり、その象徴は南極の上空に春に形成されるオゾンホールである。70年代後半から観測されるようになった現象で、年々拡大しかつ深まっている。90年代になると、オゾンホール内でのオゾン全量の減少は30%を越え、下部成層圏ではオゾン全量が実質的にゼロとなる層も観測されるようになった。オゾンホール発生のメカニズムは明らかでないが、主役はやはりフロンと考えられる。南極上空におけるオゾン量の春先の現象の特徴の1つはは、下部成層圏で現象が著しいこと、そしてその減少が1日1%と急激に進行することである。
オゾンホールが発生する重要な気象学的要因は、冬から春にかけて南極上空の成層圏の気温が著しく低く、その極上空の低温域の空気がより低緯度の高温の空気と混合しにくいことである。成層圏は対流圏に比べて非常に乾燥はしているものの、高度20km付近でも5ppmほどは水が存在している。中・低緯度では気温が高いため成層圏に雲は形成されないが、南極大陸上空では冬から春にかけて−87℃にもなるため、水蒸気や硝酸が凝結して雲が形成される。この雲がオゾン層破壊を促進していることで最近注目されるようになった、極成層圏雲(PSCs:polar stratosphere cloud)である。詳細は「極成層圏雲」のページを参照されたい。フロンの分解されることで形成される一酸化塩素がオゾン破壊の主犯であるわけだが、極成層圏雲が存在するとその雲粒子の表面で化学反応が起き、一酸化塩素が大量に発生する。そしてオゾンの破壊が促進されることになる。

参考文献
小倉 義光, 1999 : 一般気象学[第2版]。 東京大学出版会, 308頁。
新田 尚, 伊藤 朋之, 木村 龍治, 住 明正, 安成 哲三, 2002 : キーワード 気象の事典。 朝倉書店, 520頁。