■一言解説

鉛直座標に、高度zではなく気圧pを用いた気圧座標系において、空気の鉛直方向の速度のことを鉛直p速度という。別の表現をすると、空気塊が最初にいた等圧面から離れる速度のことで、鉛直p速度が負ならば、空気塊の気圧は低下しており、その空気が上昇していることを表し、逆に正ならば、空気塊が下降していることを表す。気象学では頻繁に使用される物理量である。
右の天気図は、2006年1月14日09時の地上天気図と850hPa面の鉛直p速度の分布を示す。地上天気図では、四国沖に低気圧があり、850hPa面ではその部分(正確には低気圧の前面)に鉛直p速度が負の極大域があり、強い上昇流域があることが分かる。
■詳解
鉛直p速度は、ギリシア文字ω(=dp/dt)で表現される。次式(1)は、気圧座標系の物理量である鉛直p速度と、z座標系の鉛直速度wとの関係を表したものである。この式によると鉛直p速度は、3つの成分に分解できる(詳細は「気圧座標系」を参照されたい)。
 | (1) |
右辺のそれぞれの項について着目する。第1項(∂p/∂z)wはz系の鉛直運動wによって空気塊の高度が変わるためにpの値が変わる効果を表す。次に、空気塊が運動していなくても、等圧面の位置が変わればzの値が変わることになり、この効果を表現したのが第2項である。最後に第3項は、等圧面の傾斜∇
pzで表されるので、−(∂p/∂z)
vh・∇
pzは等圧面が傾斜しているために水平運動によって空気塊が異なったp面に移動するためにpの値が変化する効果を表す。この3つの効果を総合したものがdp/dtである。
現実の総観気象の典型的な値を用いて、上記の3つの効果の大きさを見積もってみると(d≡日)、
 | (2) |
となる。したがって近似的に次式で表現できる。
 | (3) |
ただし、式(3)は注意して扱う必要がある。例えば、平坦な地表面ではw=0である。ところが、式(1)のなかの∂z/∂tは地表面気圧の時間的変化量に対応する量であるから、天気予報では重要な量である。したがって、w=0であるからといって、ω=0としてはならない。
参考文献
小倉 義光, 1999 : 気象力学通論。 東京大学出版会, 249頁。