■一言解説

天気予報は絶対の情報ではなく、必ず誤差を伴う情報である。精度に関して「明日の降水の有無」を取り上げると、その適中率は80%強である。よって、現在の天気予報は、降水の有無に関しては降水確率、また1ヶ月、3ヶ月予報等の長期予報に関しては低い(少ない)、平年並、高い(多い)の3つカテゴリーがそれぞれが何10%で発生する可能性があるかといった、確率表現を用いた予想を発表している。これを確率予報という。これに対して、現象が有るか無いかのどちらかで予想し発表するものを「カテゴリー予報」という。
■一言解説
コスト/ロスモデル
人間活動は気象に大きく左右されることが多い。気象予報は、人間活動を効率的にするための対策の意思決定に不可欠と言える。気象情報は誤差を伴うため、その情報を鵜呑みにするのも、逆に無視するのも問題である。そこで合理的な対処の枠組みとして考えられたのが「コスト/ロスモデル」である。
コスト/ロスモデルの利用には、まずコストとロスを把握しておく必要がある。コストは対策に要する費用、ロスとは対策によって軽減できる損害を意味する。「コスト/ロスモデル」に従えば、損害の生じる気象現象の発生確率がPと予報された場合、コストとロスの比がP以下ならば対策をとることになる。このような意思決定が何回も繰り返される場合、「コスト/ロスモデル」に従うことが最も正味の利益を最大にできる。
確率予報の有用性
合理的な気象予報の利用には、気象予報が確率のついた予報(確率予報)であることが必要である。また、損害を防ぐための対策について、コストとロスが評価されていなければならない。図1は降水確率予報を実例として、確率予報がただ「ある」「なし」とのみ予報するカテゴリー予報に比べてどれだけ有利かを示したものである。横軸はコスト/ロス比で、それぞれのコスト/ロス比のユーザーが予報に従って対策をとった場合の正味の利益が縦軸に示してある。
完全的中予報がすべてのコスト/ロス比について最大の利益になっているのは当然であるが、確率予報の利益はいつでもカテゴリー予報を上回っている。注目すべきは、カテゴリー予報の場合。コスト/ロス比の大きいときに利益が負になる、つまり対策をとることによってかえって損をするということである。もう1つ注目すべきは、コスト/ロス比が小さいところで、確率予報の利益がカテゴリー予報を大きく上回ることである。たとえば、気象災害から人命を守るための避難などは、コスト/ロス比が極めて小さい対策であり、確率予報が効果的なケースである。この場合、コスト/ロスモデルに従えばごく小さな発生確率でも予報されたら対策をとることになる。つまり、確率予報の場合は、小さな確率でも重要な意味を持つことがあるわけで軽視してはならない。
現在、気象庁から発表されている確率予報は、6時間毎の予報対象期間のどこかで「1mm以上の降水」が発生する確率である。降水確率予報は府県天気予報と同じ地域区分で発表されるが、その領域内のどこかで降水のある確率を予報しているのではない。領域内のそれぞれの地点で降水のある確率を予報するものであるが、地点ごとに差をつけるほどの予報技術はないので、まとめて発表しているわけである。このような確率を「地点確率」と呼んでいる。他に、確率形式のガイダンスとしては、大雨確率、雷確率及び雪確率などがある。
参考文献
天気予報技術研究会編集, 1994 : 最新 天気予報の技術。 東京堂出版, 282頁。