極低気圧(ポーラーロー)
日本海で発生した極低気圧の衛星雲画像 一言解説
極前線の極側の冷たい空気塊の中の海上で発生する対流性の小低気圧のことを広い意味で極低気圧と呼ぶ。なお、Heineman and Claud(1997)によると、極域のメソスケールの低気圧は極前線の極側のすべてのメソα、メソβスケール低気圧のことをいい、極低気圧は極域のメソスケール低気圧の中の強くて海上起源のもので、直径はだいたい1000km程度まで、表面風が15m/sを超えるものについていうとされている。図1は冬の日本海に発生した極低気圧に伴う雲画像である。雲はコンマ状のをなしている。

詳解
極域、とくに北極域の海で急激に小低気圧が発達し漁船の遭難などが起こることは昔から知られていたが、データが少ない領域のため詳しい研究は進まなかった。1960年代になってからようやく、この現象に注目した研究が始まった。衛星の赤外画像データからこのような小低気圧を多くみることができるようになったことが関係している。このころ極低気圧としての名前が始まったようである。
極低気圧の発生に関しては、研究初期は傾圧不安定性によるものとされていた。傾圧不安定性は現在でも形成、発達の基本要因であることに変わりはないが、このほかに第2種の条件付不安定(conditional instability of the second kind: CISK)が関係しているケース、またこれら両方の条件が関係しているケース、大気と海の相互作用による不安定性が関係しているケース、順圧不安定性が関係しているケース、があるという報告がなされている。Heineman and Claud(1997)の最近の報告では、海氷の端に近い下層の傾圧帯と上層の高い渦位をもった寒気との相互作用で極低気圧が形成、発達したケースが報告されている。
極低気圧は、図1の衛星画像に示したように、日本付近でも冬季、発達した低気圧の後面の寒気内にあたる日本海上でも形成される。前線は伴わない。極低気圧に伴って激しい気象現象が発生する。特に、コンマ状の尾の部分では、風向の急変、突風、落雷、降雹等の現象が起こる。極低気圧は後面に強い寒気を伴っている。

参考文献
新田 尚, 伊藤 朋之, 木村 龍治, 住 明正, 安成 哲三, 2002 : キーワード 気象の事典。 朝倉書店, 520頁。