気象レーダー
一言解説
レーダー(RADAR)はRAdio Detection And Rangingの略で、電磁波を発射して目標の存在を探知し、その位置を測定する装置である。降水粒子なども探知でき、降水粒子の数や大きさによって反射され返ってくる電波の強さが異なることから、雨雲までの距離とおおよその降雨強度を推定できることから気象分野で利用されるようになった。さらに、ドップラー効果を利用して降水粒子の動く方向と速度を観測することで、風の分布を知ることができる。

詳細
気象レーダー観測
レーダーによる降雨強度推定の誤差要因を示した図 レーダーの探知範囲は半径数100kmに及び、把握しにくい「メソスケール現象」の観測に適している。例えば、集中豪雨や突風をもたらすはげしい積乱雲などもメソスケールのバンドに組織化されていることが多く、メソスケール現象の解明は天気予報や警報の改善に必須である。
気象レーダーにおいて重要なことは、反射電力をどう処理すれば降水粒子などに関する情報に翻訳できるかということである。この翻訳に際して、最も有力になるのが式(1)のレーダー方程式である。
レーダー方程式 (1)
ここで、C:レーダーの送信電力、波長、アンテナの大きさなどで決まる定数でレーダー定数という。r:目標(降水粒子など)までの距離、Z:レーダー反射因子である。レーダー反射因子Zと降水粒子の直径Dとの間には、Z=妊6の関係がある。つまり、このZは単位体積中の全降水粒子の直径を6乗して加算したものである。
このレーダー方程式から、受信電力は降水粒子が大きいほど、数が多いほど強く、距離が遠くなるほど小さくなることがわかる。雨滴の大きさと数(粒度分布)が一定ではないため、レーダー反射因子Zからすぐに雨の強さはわからないが、Zと降雨強度R(mm/h)とには統計的な関係があり、それを用いて降雨強度を推定できる。気象庁では、ZがRの1.6乗に比例し、その比例定数が200という関係を用いている。この関係は層状性降雨を主とした統計的な関係であり、対流性降雨に対してはやや不適なところがある。
また、図1にも示したように、反射された受信電力は様々な誤差を含むことがあり、それが原因で降水強度の推定に誤差が生じる可能性がある。

ドップラー気象レーダー
ドップラー気象レーダーによる風の観測法 ドップラー気象レーダーは、一般の気象レーダーの機能をもつとともに、電波のドップラー効果を利用して雨滴や雪片などの降水粒子の移動速度(これを大気中の風速とみなす)を測定する。レーダーから発射された周波数f0の送信波は降水粒子によって反射し、ドップラー効果によってfdの周波数偏差を受けて受信機に入力される。受信機では受信周波数f0+fdと送信周波数f0の差を求め、ドップラー周波数fdを得る。このfdから、Vr=fd・λ/2の関係を用いて降水粒子のレーダビームに沿った速度成分(ドップラー速度)Vrを求めることができる。(λ:送信波の波長)
ドップラー気象レーダーで風を測定する際にはドップラー速度の折り返し現象や距離の折り返し現象、地形エコーの混入などの特有な現象が起こるので、観測で得られたデータは種々の補正処理を行う必要がある。
ドップラー気象レーダーによる風の測定法には図2に示すような方法がある。1台のレーダーでは、レーダー上空の平均風の鉛直分布や円錐面内のドップラー速度の分布(PPI)を求めることができる。一方、任意の領域の風向・風速を精度良く求めるためには、2台以上のドップラー気象レーダーの同時観測が必要である。しかし、ドップラー速度の距離方向(動径方向)や方位方向の変化率に着目すると、1台のドップラー気象レーダーのPPI走査によってもマイクロバースト(風の発散場)やガストフロント(風の収束場)などの特徴的な流れの場を検出することが可能である。

参考文献
天気予報技術研究会編集, 1994 : 最新 天気予報の技術。 東京堂出版, 282頁。
新田 尚, 伊藤 朋之, 木村 龍治, 住 明正, 安成 哲三, 2002 : キーワード 気象の事典。 朝倉書店, 520頁。