暖かい雨・冷たい雨
暖かい雨及び冷たい雨機構 一言解説
地表面の水が蒸発し、雲を形成して、雨として降るまでの過程を示したのが図1である。その過程において、水が水蒸気及び液体(水)のみの状態を経て地上に落ちる雨のことを「暖かい雨」、水が水蒸気、液体(水)、固体(氷)の全ての状態を経て地上に落ちる雨のことを「冷たい雨」と呼ぶ。図1では、暖かい雨の過程はW1→W2→W3→W4→W5.6→W7.8の経路で表され、冷たい雨は雲の中に氷点下の層があり、I1〜3のような雪片の形成、またはR1〜3のようなあられ及びひょうの形成を経て、0℃層下で融解して水となって落ちる経路で表される。

詳解
まず、雲が形成され、雨が落ちてくるまでの過程を述べる。地表面付近の気塊が上昇し凝結高度(空気中の水蒸気が飽和状態になる高度)に達すると、大きさ0.1μmの吸湿性エーロゾルに水蒸気が凝結し、雲粒をつくる。水蒸気の雲粒表面への拡散・凝結により雲粒の半径は増大する(W2凝結成長)。しかし、凝結過程のみでは、1時間経過しても水滴は霧粒程度にしかならない。実際の雲の中では水滴が互いに落下中衝突・併合して急速に成長する(W3併合成長)。衝突・併合によって水滴の大きさは指数関数的に増大し、30分ほどで半径200μm程度になる。
凝結核の少ない海洋性気団内の雲では、雲粒同士の過剰水蒸気の奪い合いが少ないので、凝結による成長が早く、衝突・併合過程が早く始まり、雲の発達から30分程度で雨が降る。貿易風帯のハワイでは、積雲高度が2〜3kmと低いが、短時間に毎時100mmにも匹敵する強いシャワー性の雨が暖かい雨のプロセスで降る。熱帯域の海洋上では雲は高く発達し、暖かい雨プロセスで形成された雨滴が0℃層以上に持ち上げられ凍結する。凍結すると雨滴のように分裂しないので、さらに過冷却雲粒を補足、成長して、大雨滴を形成する。
日本の降水の8割は冷たい雨の機構で起こっているといわれている。冷たい雨を降らせる氷晶雲や混合雲の中で氷晶ができる条件としては、気温がマイナスになることが必要と考えられるが、自然の雲では雲粒はなかなか凍らない。その結果、雲粒は冷えすぎた状態、つまり過冷却の状態で存在していることになる。自然の雲で、雲頂が-20℃でも過冷却雲粒が観測されたという報告もある。
雲が過冷却の雲粒でできているとき、雲粒が氷晶核の作用で凍結すると突然氷晶が出現する。水と氷が共存している場合、氷晶が急激に成長する。言い換えると、雲粒から蒸発した水蒸気が氷晶の表面に昇華凝結し、氷晶の成長に使われ、その結果氷晶は急激に成長して雪となって落下する。 雪が落下する途中で気温が0℃に達すると、雪の結晶が融けはじめる。完全に融けると雨になる。雪の結晶が昇華蒸発によって熱を奪われるために、結晶自身は0℃以下の状態でも落下を続ける。その結果、地上気温が+5℃でも雪が観測されることがある。