気象衛星
一言解説
気象衛星ネットワーク 宇宙から地球の広い範囲を一様に気象観測するための衛星が気象衛星である。気象衛星は、大別して2つの種類がある。1つは、赤道上空約35800kmを地球の自転と同じ回転速度で回り、常時同じ地域を観測する静止気象衛星である。日本の気象衛星である「ひまわり(別名MTSAT)」、アメリカの「GOES」そしてヨーロッパの「METEOSAT」が静止気象衛星に該当する。もう1つは、赤道をほぼ直角に横切り両極を通る軌道で地球を回って観測を行っている極軌道気象衛星である。アメリカの極軌道気象衛星であるNOAAは上空約840kmを、1日に14周している。各国の気象衛星については図1を参照してほしい。

詳解
気象衛星による観測
地球の表面積の約80%は観測点の乏しい海洋や砂漠、山岳地帯である。船舶、航空機などによる観測でも不十分である。衛星による宇宙からの気象観測は、広い範囲を一様に観測可能なため、全球の気象監視にとって有効である。よって、図1に示すように各国の静止気象衛星、極軌道気象衛星を効果的に配置して全球をカバーする観測ネットワークが形成されている。
静止気象衛星の観測範囲は衛星の直下点を中心とした半径6000kmの円内で、地球全体の表面積の約1/4にあたる。冒頭で紹介した日本のひまわり、アメリカのGOESとヨーロッパのMETEOSATの他に、インドのINSAT、ロシアのGOMSそして中国のFY-2が静止気象衛星である。
極軌道気象衛星は、北極及び南極を含む地球全体を観測することが、軌道に沿って一定範囲を軌道をずらしながら観測するため、全球を一度に観測することはできない。NOAAのほかに、極軌道気象衛星としてはロシアのMETEORがある。
静止気象衛星は広い範囲の常時観測に適し、極軌道気象衛星は極を含んだ全球の観測に加え地球との距離が近いことから空間分解能や測定精度の高さが求められる観測に適している。

気象衛星の観測センサ
気象衛星搭載主要センサの観測波長帯 気象衛星には、地球表面や大気からの放射量や太陽光の反射量を測定するための放射計が観測センサとして搭載されている。気象衛星に搭載されている放射量観測システムは、その目的からイメージャとサウンダーの2つの名称の機器にわけられる。
イメージャは細かい分解能で雲や海面水温の水平分布を観測することを目的とし、サウンダーは大気の温度や湿度などの鉛直分布を求めることを目的とする。サウンダー観測は、常時観測することよりも観測精度を高くすることが優先されるため極軌道気象衛星に搭載される。アメリカのGOESは、イメージャとサウンダー両方を搭載している唯一の静止気象衛星である。
静止気象衛星には、イメージャとして可視波長帯の観測センサが1個と赤外波長帯の観測センサが1〜4個搭載されている。可視センサは雲を含む地球表面での太陽光の反射量(短波放射量)を、赤外センサは地球からの長波放射量を測定する。赤外センサには波長帯が異なる幾つかのセンサがあり、大気中の水蒸気や雲の放射特性の違いを利用して大気の異なった特徴を観測するために使用される。気象衛星に搭載されている主要な観測センサの観測波長帯を図2に示す。
極軌道気象衛星には、イメージャとサウンダーの両機器が搭載されている。NOAAの場合、イメージャで5波長帯、3種類のサウンダーで40波長帯を観測している。サウンダーに多数の観測センサが搭載されているのは鉛直分解能を細分化するためで、可視、赤外波長帯のほかに、これらより波長の長いマイクロ波観測センサが使用されている。マイクロ波は雲の透過性が良いため、雲の下の大気や海洋の状態の観測に有用である。

気象衛星観測データの利用
気象衛星から得られた画像 気象衛星の観測データの利用方法は、イメージャの観測データを画像として気象現象の解析に使用することである。図3に、可視画像と代表的な2つの赤外画像を示す。可視画像では太陽光の反射の強い(厚い)雲域ほど白く、赤外画像では温度の低い(高度の高い)雲域ほど白く示される。赤外画像(右上)は、大気中の水蒸気による吸収、放射が少ない波長帯を使用するため、陸、海面や雲頂の温度に対応した画像が得られる。赤外画像(左下)は水蒸気による吸収、放射が大きい波長帯を使用するため水蒸気画像と呼ばれる。雲の分布のほかに水蒸気の分布が示されるため、雲が無い領域でも上・中層大気の変動の様子をみることができる。
また、連続した動画像として利用が有効である。日本では通常30分間毎に観測した画像から低気圧の発達や台風の移動の様子を監視している。
このほかに大気中の水蒸気や浮遊火山灰、雲の種類による放射特性の違いが解析に利用されている。また、雲の種類による放射特性の違いは、十分でないが絹雲と積乱雲の識別や夜間の下層雲の有無の判定に利用されている。

参考文献
新田 尚, 伊藤 朋之, 木村 龍治, 住 明正, 安成 哲三, 2002 : キーワード 気象の事典。 朝倉書店, 520頁。