■一言解説
積乱雲群のとる形態及び構造は、上層、下層での風の状態、温度分布などの周りを囲む気象状況によって異なる。そのため、気象状況に応じた分類もよくなされる。その代表が、気団性雷雨、マルチセル型雷雨、そしてスーパーセル型雷雨である。
気団性雷雨は、単一の気団に覆われ、一般風の鉛直シア(2つの高度の風向風速の差)が弱い場合に発生しやすく、発達段階の異なる複数個のセルが雑然と集合しているものである。夏季に日本が太平洋高気圧におおわれ晴天の日に発生する雷雨の多くはこの構造をもっている。
マルチセル型雷雨は一般風の鉛直シアが強い場において、発生、発達、成熟及び衰退期の対流セルが組織的に並んだものである。成熟及び衰退期を迎えたセルから吹き出す下降気流が、周辺大気と衝突することで新たなセルを発生させる。
スーパーセル型雷雨は、数個の対流セルの集合体というよりは、単一の上昇流域と下降流域をもった巨大な雲の塊である。大気の不安定度も一般風の鉛直シヤも強い状況で発生する。日本では、あまり見られないが、アメリカ中西部では頻繁に発生し、トルネードを伴う時がある。
■詳解
気団性雷雨
図1は、気団性雷雨内の対流セルの様子を表したものである。発達中のセルには、上昇気流(図中の記号:U)だけが存在しており、成熟したセルには上昇気流と下降気流(図中の記号:D)が共存している。そして、衰弱衰退しつつあるセルは下降気流だけで占められている。
マルチセル型雷雨
いくつかの対流セルで構成されている点で気団性雷雨に似ているが、セルが規則的に組織化されている点で異なる。図2に示すように、ストーム全体が左から右に移動している場合を想定したとき、個々のセルが順次右から左に発生・発達して組織化されている。ストーム全体としての空気の流れをみると、高温多湿の空気がストームの先端でストーム内に流入し、上昇して上層でストーム背後に流れ出す。中層の乾いた空気がストーム内に流れ込む気流とは直角を成してストーム内に流入し、それより上の部分から落ちてきた降水粒子からの蒸発のため冷却されて幅広い下降気流となる。ストームの下層はほとんどこの下降気流で占められている。さらに下降気流は地表面近くで水平に広がり、ストーム先端部で流入してくる高温多湿な空気を持ち上げ、新しいセルを発達させる。組織化されたマルチセル型雷雨では、この過程が繰り返し行われている。
スーパーセル型雷雨
図3に示すように、スーパーセル型雷雨は、上昇気流と下降気流の場所が分かれて分布しているため、上昇気流も下降気流も持続する。これらは、まとまって大きな循環系を形成しており、一度発生すると、エネルギーの供給、開放が理想的なため非常に発達し、激しい対流運動が起き、大きな雹を降らせたり、竜巻(トルネード)を発生させる。大きさは10〜40kmくらいで寿命は数時間にもなる。スーパーセル型のストームが発生する気象状況では、対流圏中層の湿度は低いのが普通である(つまり対流不安定度が強い)。中層の空気は下層の流れとは約90°ずれた方向からストームに侵入し(つまり一般風の鉛直シアが強く、下層風が南東ならば中層風は南西)、上昇気流の東側を迂回して北西側に回る。その際もっと上層から落下してきた雨粒の蒸発のため冷却し、下降気流となり、上昇気流の北西側に雨を降らせる。そして冷たい下降気流は地表面付近でストームから流れ出し、ストームに流入してくる温暖な風と衝突してガストフロントをつくる。スーパーセルの最大の特徴はストーム全体が回転していることである。回転の方向はほとんど全てのスーパーセルで反時計回りである。また、スーパーセル型の積乱雲のレーダーエコー強度を見ると、強い上昇流域ではエコー強度の弱いヴォルトという部分が見られ、全体としてかぎ型をしたフックエコーが見られるというのも独特の特徴を持つ。
参考文献
小倉 義光, 1999 : 一般気象学[第2版]。 東京大学出版会, 308頁。