■一言解説
近年、「異常気象」という言葉は頻繁に聞かれるようになったが、「異常気象」の定義を知っている人は少ないのではないだろうか。気象庁では、「過去30年の気候に対して著しい偏りを示した天候」を、WMO(世界気象機関)では、「平均気温や降水量が平年より著しく偏り、その偏差が25年以上に1回しか起こらない程度の大きさの現象」を、それぞれ異常気象と定義している。
しかし、気象庁では、「風雨、風雪、大雨、暴風など社会生活に支障を及ぼす大気現象」を、WMOでは「人命を奪ったり、産業界に重大な影響を与えた激しい現象」を、それぞれ異常気象と呼ぶ場合もある。この定義に基づいた異常気象は、寿命時間が短く数日以下の場合が多い。集中豪雨などは典型的な例である。また、月々の天候は平年よりわずかしか偏っていないが、それが何ヶ月も続いたため被害が生じた場合、その期間の天候を異常気象と呼ぶことがある。
■詳解

集中豪雨のような持続期間が数日以下の現象に関しては、その発生要因は地形や風系などの様々な局地的要因がケースバイケースで複雑に絡み合っており、まとめるのは容易ではない。ここでは、1ヶ月〜数ヶ月続き、かつ大規模な異常気象が起こる原因について述べる。
異常気象が発生する場合、地球上のある地域で異常高温となれば他の地域では異常低温(あるいは広い範囲で低温)となって、地球全体としては季節程度の期間でみるとほぼ一定値を保っている。降水量についても、ほぼバランスが保たれている。それは、地球大気の温度や水蒸気の総量がほぼ一定で、大気運動の活動度もほぼ一定の水準にあるからである。
そのような中で異常気象が生じるのは、温度や水蒸気の地域配分が1ヶ月以上の長期間にわたって平年からずれるような作用が働くからである。地域配分は、大規模な風による温度や水蒸気の移流によって決定されるから、異常気象の直接的要因は大規模な風の場にあるといえる。つまり、大気大循環が平年より大きく偏った時に異常気象が起こるのである。
では、具体的にどんな要因が考えられるのか。図1に異常気象の諸原因を分類した図を示す。まず、原因は大別すると外因と内因に分けられる。外因とは、大気大循環と独立に作用するもので、大循環に対する境界値・境界条件・外部パラメーター・外的物理効果を与えるものである。簡単に言えば、太陽活動や火山噴火など原因が、地表面状態や日射の変化を引き起こし、次に大気大循環の変動を励起して異常気象を起こす過程を経るもので、大気循環の変動の前にワンステップ存在する間接的要因といえる。それに対して内因は、大気大循環自身の変動および大循環との相互作用で決まる、雪氷・雲分布などの境界値・境界条件・内部パラメーター・内的物理効果に関わるもので、原因が直接大気大循環に影響を及ぼし異常気象を起こす、直接的要因といえる。
この分類に挙げた諸原因は、個別に働くというよりも、複数の原因が複雑に絡み合って異常気象を起こしている場合が多い。よって、異常気象の原因を特定することは容易ではない。これに対する一つの解決策は、数値実験の手法を用いて、特定地域の境界値・境界条件・パラメーター・物理効果を変えたときの大気大循環モデルの応答を調べることであろう。しかし、図の中の諸原因のうち、ブロッキングとエルニーニョに関しては異常気象の有力な直接的要因としてみなされている。
参考文献
天気予報技術研究会編集, 1994 : 最新 天気予報の技術。 東京堂出版, 282頁。