渦度方程式
一言解説
渦度の鉛直成分の時間変化を決める式が、渦度方程式であり、式(1)で表される。
渦度方程式(ベクトル表記) (1)
この式によると、ある場所での渦度の時間変化は、渦度の水平移流(右辺第1項)、鉛直移流(右辺第2項)、収束発散による渦度の増減(右辺第3項)そして鉛直流による渦管の立ち上がり(右辺第4項)に依存していることがわかる。

詳解
最初に、次式(2)で表される水平方向の空気塊の運動方程式から式(1)の渦度方程式を導く手順を説明する。
水平方向の運動方程式 (2)
式(3)で表されるベクトル公式を用いると、式(2)を式(4)のように書き直すことができる。
ベクトルの公式 (3)
水平方向の運動方程式(別表記) (4)
式(4)において摩擦力Fr=0としてある。この方程式の両辺にk・∇×を作用させると式(1)の渦度方程式を得ることができる。また、渦度方程式を直交直線座標系を用いて書き表すと式(5)のようになる。
直交座標系の渦度方程式 (5)
次に、渦度方程式(1)の右辺の各項について説明する。第1、第2項はそれぞれ渦度の水平移流と鉛直移流を表している。
第3項は、発散項と呼ばれる。これは、角運動量保存則により、回転している円柱状の物体についてその物体の半径を小さくすると、回転が速くなる(渦度が増す)という効果を表しているものである。発散があるということは、円柱の半径が大きくなることを表し回転速度は小さくなり、収束があれば円柱の半径が小さくなるのだから回転速度は大きくなる。天気図でみられるような大規模な運動では絶対渦度は正であるから、発散は絶対渦度を減少させ、収束は絶対渦度を増加させる。
立ち上がり項の説明図 第4項は立ち上がり(起き上がり)項と呼ばれているものである。回転している円柱状の物体がx-y平面上に寝ていたとする。このとき真上からこの物体を見ても、その物体が回転しているか否かは分からない。しかし、x-y平面上で鉛直流に場所による違いがあった場合、回転している円柱状の物体は傾くことになる。物体が傾くと、真上から見て物体が回転していることが分かるようになる。物体が鉛直方向に傾けば傾くほど、物体の回転は明瞭に認識できる(鉛直方向の渦度が大きくなる)。難しい言い方になるが、これは渦度の水平成分が鉛直成分に変化する効果を表している(図1参照)。
第4項をさらに詳しく見る。まず、−(∂ω/∂x)(∂v/∂p)の項を考える。vが上に行くほど減少し、ωがx方向に減少している場合を考える(xの値が大きいほど上昇流が強い状況)。このとき、−(∂ω/∂x)(∂v/∂p)は正であるから、絶対渦度f+ζは時間とともに増大する。これを剛体でいえば、図1で円筒が東西方向に向いた軸のまわりに、東側から見て反時計回りに回転しているとき、回転軸の東側が持ち上がり、西側を下げると(∂ω/∂x<0)、円筒は水平面から傾き、鉛直軸まわりの反時計回りの渦度(正の渦度)が増加することになる。

参考文献
小倉 義光, 1999 : 気象力学通論。 東京大学出版会, 249頁。