渦度
一言解説
気象学において、空気の流れを議論する際に用いられる物理量で、空気の回転の方向・強さを表す量である。発散が今考えている空気塊の占める面積の増減に関係しているのに対して、渦度は面積とは全く関係のない微視的にみた空気の回転を示す。空気が反時計(時計)回り、低気圧(高気圧)性の回転をしているときには渦度は正(負)の値で示される。その値の大きさで回転の強さが示される。

詳解
循環の説明図 循環と渦度
まずはじめに、渦度と深い関係のある物理量「循環」について説明する。図1のように円形の空気塊を考える。その円周に沿う接線方向の風速をVtとする。Vtを閉曲線(図1では円周)に沿って一回り積分したもの(線積分と呼ぶ)を「循環」という。ここで空気塊及び積分する閉曲線は、円でなくても良い。以上の説明より循環Cは次式(1)で表される。
循環の定義式 (1)
式(1)においてdsは閉曲線の線素分を示す。そして、図1の円の面積(一般的には閉曲線で囲まれた部分の面積)をSとする。すると、渦度は循環Cを面積Sで割ったもの(C/S)で、かつSを限りなく小さくした(S→0)とした極限値で表される(式(2))。
渦度の定義式(1) (2)
ここで注意すべきは、循環は任意の閉曲線について成り立つ物理量であるが、渦度は、無限小の面積について成り立つ物理量であるということである。

渦度の計算式
直交座標系での渦度の説明図 具体的に渦度の計算について説明しよう。図2に示した点A(x,y)における渦度を求めることにする。ここで点A(x,y)を中心とするx±dx、y±dyで定義される微小な四角形を考える。線積分の線素分dsは反時計回りの方向を正と決められている。この場合の渦度は次式で表される。
渦度の定義式(2) (3)
式(3)はx−y平面上の流れに関しての渦度であり、ベクトルではその向きはz方向、つまり渦度のz成分となる。同様に、x−z平面やy−z平面の流れに関しても渦度は定義でき、それぞれ渦度のy成分、x成分となる。x、y、z方向の単位ベクトルをそれぞれ、ijkと表すと、渦度は3次元のベクトルとして次式(4)で表される。
3次元渦度の定義式 (4)
気象学において、特に総観規模スケールの現象を扱う際には、鉛直方向の流れは水平方向に比べるとはるかに小さい。そのため、渦度はx−y方向の流れから算出した渦度のz成分、式(3)のみを取り扱うことが圧倒的に多い。

参考文献
二宮 洸三, 1998 : 気象予報の物理学。 オーム社, 202頁。